「栴檀(せんだん)は双葉(ふたば)より芳(かんば)し」
天才は早熟な者が多い。
朝日新聞のGLOBE 6月3日号で読んだのだが、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞するなど「超天才数学者」と呼ばれるテレンス・タオ(42)は9才で大学に入ったという。
一般人の知り合いに普通そんな子供はいない。私はその例外かもしれない。
私は長年、中学受験を指導してきて優秀な生徒はたくさん見てきた。
数学科に行くという生徒もいた。
その中でも十数年前の小学5年生のTくんとの出会いは衝撃的であった。
アスペルガー症候群であるTくんはお母さんと入塾相談に来た。
お母さんに促されるままにぎこちない挨拶をした以外はTくんは私と視線を合わせず、宙を見つめているような表情で、自分のことが話題にのぼっていることも一切関知しない態度であった。
お母さんが言うには高校数学の微分・積分ができるという。
半信半疑で確認してみると理解しているようなのだ。
今までこんな子供と出会ったことがなかったので非常に驚いた。
個人指導で国語・算数・理科をみることになった。
算数は私が担当した。
そこでさらに驚くことになった。
このような筆算で解いても間違いそうな問題を暗算で解くのである。
1、2分じっと式を見つめていて、ぼそっと解答する。
それがすべて正解なのである。
私は教えるというより、合格に必要な問題を提供したにすぎない。
超難関校に彼は合格した。
風の便りに聞くとそこでいじめにあい退学したという。
数学の天才は今どうしているのか。