同じ師 継いだ2人 ======================
「アンビリーバボーだね。」「50年来の夢が現実になった。」
(10月)6日、ノーベル化学賞受賞の知らせを受けた日本人の研究者は、好対照な反応を見せた。
温和と評される鈴木章さん(80)、シャープな根岸英一さん(75)。
2人は1960年代、米国の大学で同じ恩師(パデュー大のハーバード・ブラン教授)に学んだ。
朝日新聞 10月7日付
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この記事は正に師弟教育の典型を示している。
私は、師弟教育が教育の原点ではなかろうかと考えている。
教育のためのすばらしい指導法や教材、教具は多く存在するが、教師を越えるものはあり得ない。
さらに教師が人間ではなくロボットになってしまうことも考えられない。
すなわち、すぐれた教師とは知識や知恵を教えるだけでなく、研究(学習)姿勢やその師しか持っていない個性も伝えるのである。
いや伝わるのである。
伝承といってもよい。
そして弟子の中には「青は藍より出でて藍より青し」となる者も出てくるのである。
私が大学受験のとき数学を習った先生(後に数学者)を思い出す。
私は先生の説明もよく聞いて理解しようとしたが、同時に氏の癖もまねた。
問題を考えるときの姿勢、鉛筆の動かし方、ひとり言、そんな一見意味のないようなことまで似てくるようになった。
その甲斐あって(?)、自分でも信じられないような入試本番レベルの問題がとけるようになった。
京都新聞に「京都学びの系譜」が連載されている。
さまざまな分野の頭脳の脈々たる流れが紹介されている。
その記事によると、――― 2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治(71)=理化学研究所理事長=・・・・・は(京大工学部工業化学科に入学後)4年になり、卒論の指導を宍戸圭一(1908~1995)に仰いだ。
・・・・・・・実際に指導したのは助教授だった野崎一(88)=京大名誉教授=。
・・・・・・68年、野依は29歳の若さで名古屋大理学部の助教授に招かれる。
・・・・・隣の講座の教授で野依招請にかかわったのがフグ毒研究などで知られる平田義正(1915~2000)。
・・・・・・平田は多くの門下生を育てたことでも有名。
2008年にノーベル化学賞を受けた下村脩(81)=米ボストン大名誉教授=も平田の元で博士号を取った。―――
このような学問の系譜があってこそ人類の英智は伝わっていくのだろう。