教育への疑問(3)
怒っても、罪を犯してはなりません。
日が暮れるまで憤ったままでいてはいけません。
悪魔に機会を与えないようにしなさい。
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悪いことばを、いっさい口から出してはいけません。
ただ、必要なとき、人の徳を養うのに役立つことばを話し、聞く人に恵みを与えなさい。
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無慈悲、憤り、怒り、叫び、そしりなどを、いっさいの悪魔とともに、みな捨て去りなさい。
新改訳新約聖書 エペソ人への手紙 4章26,27,29,31節
先月、米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の中村修二氏が、赤崎勇氏、天野浩氏とともに「青色発光ダイオード(LED)の開発」でノーベル物理学賞を受賞した。
受賞決定後、氏は米国のテレビで「私の研究は怒りの結晶です」というような発言をしたという。
どういう怒りが積み重なってきたのだろうか。
新聞などから整理すると次のようなことになる。
氏は徳島大学大学院卒業後、当時はまだ地元密着の中小企業だった「日亜化学工業」に就職した。
そこで10年もの間、不本意ながら上司から命じられた製品開発ばかりやらされた。
売れないと文句を言われ続けた。
その一方、京大卒の社員が出世していったことに不満をもった。
その後、5年かけて青色LEDの開発に成功した。
しかし、会社が中村氏に渡した報奨金はたったの2万円。
氏にとっては「失敗したら社員や部下のせい、上手くいったら会社や上司のもの」というシステムに憤りを感じる。
青色LEDの開発までの怒りの経緯はこんなものだろうか。
青色LED開発の原動力以外にも怒りはつづく。
その後は有名な「青色LED訴訟」を日亜化学工業相手に起こし、結局多額の8億4千万円で和解している。
本人としてはこれには不満で日本の裁判所は大企業側に立っているとの見解だ。
そして今や大企業となった日亜化学工業を現在も恨み続けているという。
研究の原動力について問われた氏が「アンガ―(怒り)だ」と繰り返したのはこうした経緯があったからだろう。
しかし、日亜化学工業の創業者小川信雄氏の理解のもと、他の社員と異なり研究三昧の生活を送ったり、米国留学の機会を得たり、5億円の研究費を獲得していた事実を考えるならばもうひとつ納得がいかない。
ところで私ども育星舎は「科学の学校」という自然科学分野の指導部門もある。
ここで大切にしている「科学する心」は決して「怒り」ではない。
そんなことで科学教育はできないと確信している。
さらに「怒り」は今も世界を揺るがす「戦争」というものに直結するものである。
子供達にこの「怒り」を伝えてはいけない。