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入江塾は、京都市の塾グループ「育星舎」のなかの中学受験専門部門で、小学生を対象とした学習塾です。授業は1科目週1回1時間。無理のない楽しい中学受験を。本部の北野教室(北野白梅町、円町)を中心に出町教室・桂教室でも開講中。洛星、洛南、西京、洛北、東山、京都女子、同志社など多くの中学に合格の実績があります。

反転の論理

昨年の11月13日に哲学者鷲田清一氏1)の「ホスピタリティについて」という講演を聞く機会に恵まれた。(住まいの近くの母校で開かれ、申込み手続きも楽だったので私にとっては有難かった。)

理系が続いていた大阪大学の総長に氏がなったということでマスコミにも出られることもあり、お顔は存じ上げていた。

期待どおりわかりやすく説明して下さり、私流の「反転の論理」と名づけた社会関係を知ることができ大変有意義な時間を過ごすこととなった。

 

 ところで、同じく去年のことだが、マイケル・J・サンデル氏2)のハーバード大学での講義がNHK教育テレビで「ハーバード白熱教室」として放送され話題となった。

そして、来日された時の講義の人気の大きさや著書の日本語訳の発行部数の多さがそれを実証するとともにさらに拍車をかけた。

この現象を見て日本人がこんなに哲学的思考に関心があったのかと驚かされた。(実は哲学に無関心と思われた理系大学生のわが息子が氏の著書を持っていたのでそのすごさを実感した。)

 

私の父によると昔の旧制高校生は哲学について語れないとまさに話にならなかったらしい。

その頃デカンショという言葉が流行ったことはそれを示している。

また日本には西田哲学という大きな存在があり、当時その直系の故久松真一氏3)(父は面識があったという)等がそれを受け継いでいた。

 

しかし、今や――哲学が「万学の女王」の玉座を去り、ニーチェが「神の死」を宣告してから久しく、その空位は現在では科学によって埋められようとしている。

・・・・・・今や満身創痍といっても過言ではないだろう。

・・・・・・哲学の〈知〉としての輪郭はダリの描く時計のように溶解してますます見えにくくなっているのが現状である。4)――との指摘のとおり、哲学への人々の興味がうしなわれつつあることは実感する。

 

私自身やはり解答がはっきりする数理的思考の方が整理しやすい。

しかし、実人生の中では1つの結論を導くことはなかなか容易ではない。

だから、難しい哲学思想はよくわからないが、哲学的思考そのものには興味を持っていた。

そこでということでもないが、厚顔無恥とも言える私の性格が幸いして(?)一昨年哲学者稲垣久和氏5)と東京で夕食を共にさせていただいた。

理学博士でもある氏がなぜ哲学の世界に行かれたのか私は興味を持っていた。

それである方を通してお願い申し上げた次第である。

 

ジュネーブ欧州共同原子核研究理論部門研究員であった氏の話は理論物理学から公共哲学まで幅広く、そして私のような浅学な者にも真剣に接して下さったことに身が縮まる程緊張しながらもとてもうれしかったことを覚えている。

それでも酒もタバコも嗜まれない先生を前に、私といったらワインを遠慮なしに呑んでいたのだからその人間性が疑われよう。

 

話を冒頭の講演会に戻したい。

 

その中で鷲田先生は「主人が客になり、客が主人になる」「ケアする人がケアされ、ケアされる人がケアする」などの社会での反転現象について語られた。

それを前述したとおり私は勝手に「反転の論理」と名づけた。

 

前者の例として茶道での主客の位置関係などもとり上げられた。

後者の悲しい例として「電車・バスの中で子供が座って親が立っている光景」には笑わされた。

それらの中でも特に印象に残った好例に映画「えんとこ」がある。

それは重度の身体障害者遠藤滋氏6)と介助の若者たちのドキュメンタリーである。

鷲田先生の説明によれば元教師の遠藤氏の意志により彼と若者たちの立場が逆転していったという。

高校生の女の子は「遠藤さんが私のことを真剣に聞いてくれた」ことを感謝する。

他方ある青年は遠藤氏が言語障害だったので「自分が他人の話を真剣に聞けるようになった」ことにお礼を言う。こんな関係が生じてきたのである。

 

この「えんとこ」で思い出した最近の本がある。

脳性まひの大畑楽ら歩ぶ氏7)が書かれたものだが、それを読むと氏の天性の明るさが他者に元気を与えていることがよくわかる。

そして他人を惹きつける何かを持っておられる。

理学療法士でケアする立場だったご主人が氏に求婚する経緯は微笑ましくも考えさせられるものがある。

もちろん結婚に至る1つのケースと言ってしまえばそれまでだが、これは「反転の論理」の一事例ではないかと私は思うのである。

 

さらに私見だがこの反転の論理は聖書の中にも記述がある。

最後の晩餐の時にイエスが弟子達の足を洗う場面(ヨハネ13:4~15)はどうであろうか。

 

14節―それで主であり師であるこのわたしが、あなたがたの足を洗ったのですから、あなたがたもまた互いに足を洗うべきです。

 

 

1)大阪大学総長 専攻-哲学特に現象学 1989年サントリー学芸賞受賞 2000年桑原武夫学芸賞受賞 著書-「分散する理性―現象学の視線」(勁草書房)その他

2)ハーバード大学教授  専攻-倫理学・政治哲学  著書-「これからの『正義』の話をしようー今を生き延びるための哲学」(早川書房)その他

3)元京都大学教授  専攻-仏教哲学  著書-「東洋的無」(弘文堂)その他

4)「岩波講座 哲学01 いま〈哲学する〉ことへ はしがき」(岩波書店)から引用

5)東京基督教大学教授 専攻-キリスト教哲学・公共哲学 東京都立大学大学院博士課程修了(理学博士) 著書-「公共哲学叢書⑥ 宗教と公共哲学」(東京大学出版会)、「公共福祉という試み」(中央法規出版)その他

6)立教大学文学部卒業 元養護学校教員  著書-「だから人間なんだ」(自主出版)

7)著書-「三重苦楽」(ASTRA)

 

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●育星舎グループ顧問:入江篤志

☆小3の頃は、九九が覚えられず 居残りをさせられたぐらいの学力の子。

しかし、すぐれた師匠達との出会いのお陰で、私立洛星中学、さらに京都大学法学部に合格する。

ところがその後学習意欲を喪失。

長いモラトリアムの末アルバイトをしながらプロ家庭教師に、そして学習塾を設立、今に至る。

 

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