先月、12月4日(金)に映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」がテレビで放映された。原作は2003年に刊行された渡辺一史氏作の同名物語。わがままな強烈な個性の重度身体障害者・鹿野靖明氏とボランティアたちの交流を描き、大宅賞・講談社ノンフィクション賞をw受賞した。筋ジストロフィーの障害を背負う鹿野さん役を大泉洋、鹿野さんのもとに集まるボランティア役を三浦春馬や高畑充希その他が演じ、映画でも好評だった。
主人公のことば「他人の助けを借りる勇気」「夢をあきらめない」「人はできることよりできないことの方が多い」等は重度身体障害者ゆえ重みがある。以前、私は哲学者鷲田清一氏の講演会に行ったことがある。(代表ブログ「反転の論理」にそのことを書いている)。話題はこの物語だったと思うのだが、「ケアする人がケアされ、ケアされる人がケアする」社会の反転現象について語られたことを覚えている。
実際、鹿野氏のようにその人の魅力によって介助者が集まり、本人が周りの人々に影響を与えることもある。さらには社会的にも活躍している重度身体障害者もおられる。分かる範囲で数例あげてみよう。自らを「寝たきり社長」と称し、19歳でウェブ制作会社・仙拓を起業した佐藤仙務氏(脊髄性筋委縮症)。FC岐阜前社長で、発症して退任後は執筆、講演活動を行う「株式会社まんまる笑店」を設立し代表を務める恩田聖敬氏(Aさんと同じALS)。医師で、発症後カルテの翻訳や法律事務所から医療訴訟の相談などを受ける「東京メディカルラボ」代表の竹田主子氏(同じくALS)。発症後、患者同士が支え合う「ピアサポート」に生き甲斐を見出し、一昨年参議院議員になった舩後靖彦氏(同じくALS)。生後8か月の時の事故で頸椎を損傷し、重度の身体障害を持つも、19歳で自立生活を始め、その後「自立ステーションつばさ」を設立し障害者運動、自立支援に携わり、舩後氏と共に一昨年参議院議員になった木村英子氏(脳性麻痺)。
想像を絶する苦難を乗り越えて多くの重度身体障害者は生きている。