第2、第4日曜日発行の朝日新聞エデュア1月12日号の特集、――中学入試本番「我が家はこうして乗り切った!」――はとてもおもしろかった。中学受験専門塾を長年主宰してきた私としては毎年のことなので慣れているが、一生に一度か二度しか体験しない保護者にとってはそれは大変なのだなとつくづく思った。
私は今6年生を担当してはいないが、数年前までは受験が終わるとほっこりした。受験指導には大変なエネルギーを使う。過去にはうつ病にもなり、無理をするとそれが再発した。
学力指導だけが大変なのではない。入江塾の特色である「楽しい塾」を体験させることが並大抵の努力ではできない。10才から12才ぐらいの子に過酷な受験勉強を苦痛なくさせるには、こちらがその苦痛を背負ってやらなければならないのである。
入江塾では入試前日の夕方、横幅3mのホワイトボードに自由に落書きをさせる。「絶対合格」や受験校名などの文字やイラストが全面に書かれる。それが最後のお楽しみとなる。私達講師のできるのはそこまで。受験する当事者は生徒本人達なので、本番で実力が充分出せるよう祈りながら送り出すのが毎年のならわしではある。
ただ当日のアクシデントで苦い思いをしたことがある。10年近く前のA君の場合、私は母親が入試会場まで一緒に行くものだと思っていた。しかし、A君のお母さんは仕事の関係でA君のお姉さん(高校生)に同行させた。道に迷ってしまい、少し遅れて会場に着いたという。その結果は不合格だった。遅刻して動揺したのが原因かどうかわからないが、「注意しておけば良かった」とくやしい思いが残ったのは事実である。