不眠とうつ。
日記には可哀想に思えるほど二つの病に苦しむ蒋介石の日常が克明に描かれている。
「12時に目を覚まし5時まで眠れず、最も長く重い不眠だった」(48年5月5日)
「睡眠薬を飲まないと安眠できない。服薬しても夜半に効き目が薄れ、深く眠れず胃が痛くなり医者を呼んだ」(同月9日)
……短気で、部下や同僚の失敗を「混蛋(ばか者)」とののしる悪癖もあった。
49年3月31日の反省録で「他人を虚心坦懐に敬えない。
(中略)今回の失敗(共産党への敗北)の大きな原因だ」と後悔。
「最近怒りっぽい。戒めねば」(49年11月24日)と書いたが、護衛などの回顧録によれば短気は生涯直らなかった。
……敗北や挫折を重ね、外交ではもちろん、人間そのものに対してもニヒリズムに近い不信があったのだろうか。
(蒋介石日記⑫独裁者の素顔 野嶋剛 朝日新聞)
去年の暮、2人の同級生と会いその場に居合わせた常連さんと4人で政治談議に花を咲かせた。
同級生の1人は中高生の頃成績優秀で現役で東大の理Ⅰに合格した。
その彼がインターネットからとり出したというプリントを配ってくれた。
それには大きく「俺は利権と政局が第一。」と書かれてあった。
そしてドイツのヒトラーに扮する現与党幹事長の写真が載っており、「政治主導なんだよ、文句あっか?」との発言が添えられている。
またその横にはイタリアのムッソリーニ(?)に扮する現総理大臣が右手を掲げて「ママ~、子供手当おかわり~っ!」と叫んでいる姿が写っている。
それを見た3人は大笑いした。
しかし、もし現実がこうだとすれば笑い事では済まされない。
自分で考える力がない人間が増えればそれだけマスコミも含めたいわゆる権力に国民は翻弄される。
ところで、独裁者に共通するところは「人間不信」であると指摘しているのは、吉成真由美氏である。
スターリンの例を出しながら―――絶対権力者としての暴力的父親と非力な、しかし息子を溺愛する母親との組合せというのは独裁者の両親に共通している。
ヒトラー、ナポレオン、フセイン、毛沢東…。
いずれの場合もこの2者の組合せが、「強烈な人間不信」と「誇大妄想」と「過剰自己愛」とを子供の心に育んでいる。
―――(「危険な脳はこうして作られる」 新潮選書)
ちなみに東大出身の同級生に私が「日本の国家を動かしている多くは東大出だろう。
だから日本の問題は『東大の問題』とも言えるんじゃないか。」と言ったところ、「そうだな」との返事が返ってきた。これには拍子抜けしてしまった。