受験の悦び その2 の続き
11月以降、まさに勉強三昧。
起きているときは食事、トイレ、風呂以外、机に向かった。(今も、その頃の私の部屋は残っているが、イスのあった床の部分は擦り切れている。)
寝付きの悪かった私に母は薬用酒を勧めてくれ、それが功を奏した。
その頃、四当五落(睡眠時間が4時間ならば合格するが、5時間を超えると不合格になる)などと言われていたが、短眠は私の身体に合わなかったので最低8時間は眠った。
科目はまず手の付け易い日本史から始めた。
重要単語を色づけし、ページにおけるその位置関係を覚え、それをもとに全文を暗誦できるまでくり返し音読する。
3科目全体のスケジュール同様、ある程度進めばフィードバックをくり返した。
表裏2ページ分が完了するごとに、本の小口にあたる紙片の厚みの部分に色をつけた。
だんだんとページが進むごとに国語辞書のように小口に色面ができて、本を閉じていても進み具合が一目でわかり、励みになった。
12月に入り、世界史に移った。
各国の歴史は日本史と同様問題なく進んだ。
しかし、京大はいわゆるシルクロード地域がよく出る。
数十年ごとの世界地図はあったが、世界の地域が時間軸で動き出すと私の頭は混乱した。
それでも基本テキストは何とか制覇した。
当時、家の近くにSという写真館があった。
中1から高3まで毎年春先には、生徒手帳作成のため顔写真を撮ってもらいに通った。
そこの主人は直言のなかなか多い人であった。
去年の暮、願書作成のために行ったとき「どこ受験するんや」と聞かれて返答に困った。
それで今回は変えようと思っていたのだが、つい足が向いてしまった。
おじさんは開口一番、「おい、おまえ顔相かわっとるで」と言うではないか。
何かに取り付かれているような表現に思え、縁起が悪い。
来たことを後悔した。