( 「山村留学 1」のつづき)
フリースクールに期待をかけざるを得ない親の気持ちが私にはよくわかる。
しかし、それを裏切るようないたましい事件も起きている。
古くは愛知県美浜町、近くは京都府丹波町でそれぞれ寄宿生活をしていた生徒が死亡している。
そこまでは想像もしていなかったが、私はやはり親として心配であったので、1人であるいは妻と一緒に何回か息子に会いに行った。
面会といっても、一泊の料金を払って生活を共にするだけ。
朝は6時に起きて皆で朝食準備を手伝う。
生徒達は早く食べたくてしょうがないらしい。
用意ができ全員食卓につく。
私には食べきれない量の多さ。
食の細かった息子がそれを食べているのを見て驚いた。
食後、後片づけを終え、通学組以外は農作業。
害虫らしきものを葉から取る作業もさせられた。
私にとってはなかなか大変だ。
まじめに作業をしない子供ももちろんいる。
時間が経つのは遅い。
やっと昼食。
食後は、日によってため池で釣り、町営プールで水泳、廃校の体育館でバスケット、グランドを借りての野球となかなか多彩であった。
あるときK先生は私をうっそうとした林の中にある小さな池に案内してくれた。
そして枯れ草の中から釣り糸のついた竹竿をとり出し(こうしておけば誰にもとられないらしい)、土の中からミミズを探し出し、針につけたそれを池に放り込んだ。
手繰り寄せたりしているうちにブルーギルが引っかかってきた。
この一連の行動に、「野性的な方だな」と私はひどく感心した。
と同時に尊敬の念も湧いてきた。
医者もいないこんな山奥で生活していける理由がわかった。
私にはないこのような生命力を息子にも持ってもらいたい。
そんな気持ちになってきた。
夜の食事の後は学習時間。
K先生やスタッフが個別に教えておられる。
高校受験を控えた中3生もいた。
ただ、私から見れば本当に基礎的なことばかり。
しかし、学習障害的な子もおられるのでこれはこれで大変だなと実感した。
ただ「先生(私のこと)のところの生徒さん達は優秀な方ばかりでしょうね。」と言われてしまったが。
身体の弱かった息子がここでの生活のほぼ1年間、1回風邪を引いただけで無事過ごせたことは彼に体力がついた証拠。
そして日本海でのキャンプで大きなキスを釣ったり、近くの川でうなぎの夜釣りをしたりと野性的本能を蘇らせるに充分な体験をさせていただいた。
「学歴よりもまず生きる力だ。」私は今でもそう思っている。