南米エクアドル・ガラパゴス諸島のピンタ島で、たった1匹残された「孤独なジョージ」と名付けられた雄ゾウガメのことが新聞に載っていた。
ピンタ島ではゾウガメが船乗りの食料などで激減し、推定年齢80代のジョージは絶滅危機種の象徴として知られているという。
このガラパゴス諸島こそかの有名なチャールズ・ダーウィンが1835年に上陸し、島々の動植物の研究を行ない、進化論をつくりあげた母なる島々である。
ピンタ島以外にも亜種のゾウガメ(ダーウィンの言う適者生存の根拠)がいるのだが、ジョージとその近縁の雌とのペアリングが成功し、近々2世が誕生するということだ。
育星舎の北野学舎にも「カズオ」という20cmくらいのニホンイシガメと思われるカメがいた。
理科実験教室・科学の学校主催の野外教室で京都の丹波地方瑞穂地区に行ったときに小川で生徒が捕ったものだ。
本人は家で飼いたがったが母親が断固反対したため塾で飼育することになった。
そこで自分で育てたいと思っていた彼の名前から「カズオ」と名づけ、皆でかわいがった。
カズオは突然の環境の変化そして孤独にも耐え、数年元気にしていたのだが3年ほど前忽然と我々の前から消えてしまった。
何となく淋しく思った私は近所のペットショップで子どものミドリガメを数匹買ってきた。
可愛らしかったが「カズオ」ほどの親近感はなぜかわかなかった。
死んだものもいたり、欲しがった生徒にあげたりして今は10~15cmほどに成長した2匹が残っているが、名前はまだつけていない。
ミドリガメは外来種で、その旺盛な繁殖力で地域によっては捨てられたミドリガメが排水溝などに多数住みついているという。
日本固有の生態系を崩す悪者にもなっているのである。
ところで人間の大脳を三重構造と考える説がある。
知能や理性を司る人間脳、本能や感情を生み出す動物脳、生命を維持する生命脳の3つに分類する考え方である。
それによれば爬虫類のカメは生命脳の1つしか持っていないといってもよい。
だからなのか2匹のミドリガメには表情の変化がない(ように見える)。
しかし、「カズオ」には感情があったような、なんとなくそんな気がするのである。
カズオは「カズオの孤独」に同情した誰かがわざわざ古里の川にもどしてやったのだと私は確信している。
今はカズオの2世も誕生しているかもしれない。