心療内科からは薬を出してもらい生活上の注意も受けた。最初はなんとか無理をせず、規則正しい生活を心がけたが、続かなかった。特に飲酒については止められなかった。酒を飲んで寝る習慣が学生時代から続いていたのだ。医者は「酒は睡眠薬より何倍も害悪だ」と言う。結局その医院には行かなくなった。
一向に生活状態を変えることなく時が過ぎた。ある授業の時、クラクラと目まいがして倒れこみ、何も考えられなくなった。近くにいた講師に助けを求め、休まざるを得なかった。その時を境にして本格的なうつ症状が出だした。近くの心療内科に行き抗うつ剤など複数の薬をもらったが一向に良くならなかった。
塾の経営的にも私自身が休んでいては成り立たなかった時代であった。塾の近くにワンルームを借りて、教室に通うことにした。授業以外はほとんどベッドに横たわっていた。ただ予習もしなければならず教材を持ち込んで解説づくりをしようと試みた。特に中学入試の算数の難問には困った。脳の働きが低下しているのかなかなか解けないのである。
また医院から出してもらっている多くの薬も気にかかった。脳細胞に直接働きかけるような薬なども含まれているのでその副作用が心配である。薬から解放される時期も医者からは告げられなかった。
新聞の広告で購入した「うつ病は必ず良くなる」(税所弘著)を藁をもつかむ思いで読みふけった。税所先生の提唱する薬に頼らない「早起き心身健康法」もできるだけ実践してみた。止められなかった寝酒も控えた。雨の日も早朝から北野天満宮へ散歩に出かけた。1年近くそんな生活が続き、ようやく体調をとり戻した。
その後は「無理をすると調子が悪くなる」のくり返しで15年以上も持病として生きてきた。ところがここ3年ほど全くうつ症状が出なくなり、風邪も引かなくなった。仕事を極力減らしストレスをためず、スポーツジムに通ったり、昔に習ったヨガの体操をしたからだろうか。
数か月前まではこの体調の良さに感謝の気持ちで過していた。