私の人生(18)
【仮面鬱病】
内因性鬱病のうち、身体症状が前面に現れ、精神症状が乏しいかまたはそれを欠くもの。
身体症状は多彩で客観的根拠がなく、また変わりやすい。
広辞苑 第6版
10年程前の今頃、私は自分の体調が普段と違うなと感じ始めていた。
今から思えば、自分の能力を超えた無謀な計画・実行から人間関係の行き詰まりがいくつか生じていた時だ。
知り合いの内科で胃腸の検査をし、紹介してもらった専門医に心臓などを診てもらったが、特別な異常はない。
それでも納得がいかない。
ある大学病院では内科系をめぐり歩き、果ては「ここは重病患者を扱う所です。」とまで言われてしまった。(後で知ったのだが、このような行動をドクターショッピングというらしい)。
私の訴えているつらい諸症状(一般的には不定愁訴、自律神経失調症だろう)には誰も耳を傾けてくれないことに悲しさが込み上がってきた。
その後も人づてに整体・鍼灸などにも行ったが特段の効果がなかった。
秋口のある日の授業での指導中、一瞬思考が停止し、頭の中が真っ白になってしまった。
生徒には悪かったが授業は中断させてもらい、他の講師に助けを求めた。
いったい何が起こったのか自分でもわからなかった。
その後、MRIの検査も受けたが問題はなかった。
翌年の春頃、妻との会話からひょんなことにある心療内科医院に行くことになった。
経歴はすばらしい先生だったが今までの経験上、期待はしていなかった。
受診直後だったと思うが、アンケートのような1枚の紙切れを渡され、それに記入していった。
中には答えることをためらうような質問もあった。
そのテスト用紙を看護婦さんに渡してしばらく後にもう一度診察室に入った。
先生は「これは完全な仮面うつ病です。仮面うつ病とは身体症状という仮面をかぶったうつ病です。」と言われた。
病状に対しこんなに断定されるとは予期していなかったし、病名にも「何で私が」と思って驚いてしまった。
うつ病は私の親族には誰もいなかった。
ただ、過去に私の塾の小学生が、この病気で休塾したことがある。
本人が「お母さん、ボクはなぜ生きているんだろう」と言ったとのことを聞いて、「この病気は子供にも発症するんだ」と改めて思い、非常に心配したことがある。
その医院では2種類の薬をもらい帰途についた。
病名にはショックを受けたが、これで回復に向かうと思い、少しは晴れやかな気分になっていた。
しかし、それは単なる思い過ごしでしかなかった。
(内容的に重複するものだったので、2009年のブログをほぼそのまま掲載させていただきました。)