(「山村留学 その3」 のつづき)
この1年息子を高校受験に集中させなければならない。
ところが自宅にはテレビをよく見る妹がいる。
また、家内が一緒だと本人が甘えるにちがいない。
そこで自宅の近くにある実家の離れで私と息子は生活を始めた。
平日は地元の公立中学に通い、帰宅後塾に行くということになった。
朝は私が朝食を作ってやるはずだったが、結局自宅で食事をし登校するようになってしまった。
夕食は家内が塾に持ってきた。
私から「いってらっしゃい」「おかえり」とは言うもののそれ以上の会話らしきものはない。
彼にとってはフリースクールの時代の方がまだ楽しかったかもしれない。
中3の新学期が始まった頃、家内から「本人が私立R高校を目指している」との話を聞いた。
R中学高等学校は私の母校で良い学校だと思っているが、彼の志望校としてはふさわしくない。
理由はまず中学受験の指導で彼の学力はほぼ把握しているつもりだが、それからすれば偏差値が高くて選択肢に入らない。
また、フリースクールでの1年間は夜の2時間ほどしか学習をしてきていない。
すなわち同学年の習熟度に比べ遅れている。
そして在籍していた公立中学には登校していなかったので中2の評定はオール1である。
このままでは公立高校に行けるかどうかもわからない。
そのような生徒が今の高校受験制度からみてこんな進学校を第一志望にすべきではないのである。
「お前何考えとるんや。ええ加減にせい!」と怒鳴ってやりたかった。
しかし、「以前中学受験直後の私の一言で本人が傷ついた」一件を思い出すと、ここは黙ってもう少し様子を見ようと考えざるを得なかった。