中学受験の算数において、計算力は最も基礎となる部分であり、重要なものです。
計算をしっかりこなせないようであれば、どれだけ授業内容を消化・吸収していってもテストで高得点を取ることは難しいでしょう。
私たちは普段生徒たちに「絶対に計算を間違うな!」と口を酸っぱくして言っていますが、それくらい計算を正確に行うことは大事なことなのです。
算数のテストでは文章題だけではなく計算問題も出題されます。
計算問題は文章題と違い四則演算のルールに従って処理をしていくものですので、正確さが最も要求されます。
計算は100問中100問正解する正確さを身につけるのが最終目標です。
駸々堂模試を受ける5年生以上の生徒は計算を間違えてはいけないということを一度は言われていると思います。
間違いがあると返却の時に指摘することもあって、生徒達も計算を間違えてはいけないという意識を持ってくれています。
また、テストには制限時間がありますのでスピードも要求されます。
ただこれも速く解くだけでは不十分で、正解していなければ意味がありません。
だからまずは正確さに重きを置くとよいでしょう。
何人かで競争したときに一番乗りで出来たのに丸付けをしてみると半分も合っていなかったということもありますので、早く終わらせようとするあまりいい加減にならないように注意する必要があります。
四則演算の方法は4年生のうちに全て学び終えるので、そこからは注意力や集中力、分配法則などの工夫の力などを通して正確さ・スピードを高めていくことになります。
しかし、これがなかなか思うようにはいきません。
例えば問題が横に長くなるにつれ、計算する順序も複雑になってきます。
+・-より×・÷のほうを先に計算するということはわかっていてもついつい順序を無視して左から右に計算してしまうことは皆が一度は経験していることだと思います。
現在生徒達には計算の順序線を引かせていますが、これは特に逆算のときに有効です。
考えたことを視覚化して、後から落ち着いて計算することができます。
計算の順序線は確実で楽な方法なので、生徒の皆さんもしっかり実践するように指導しています。
順序線の例
ここまで計算の大切さについてお話ししたところで、次は計算力を上げるコツについてお話ししたいと思います。
まずは計算のミスについて。
私達講師は普段様々なミスに遭遇します。
単純に計算して違う答えを出してしまうという以外に、先ほどの順序に関することや、計算方法が十分身についていないということが挙げられます。
自分がどんな間違い方をしたのかよく把握しておいて次回に生かす、つまり同じ間違いを繰り返さないように意識することが大切です。
順序線を引いていても逆算をするときに処理を誤っている生徒がいます。
演習の最中に「(引き算の答えがマイナスになるから)引けない!」という声が聞こえてきたり、答えがとんでもない数(それこそ分母が4ケタになるような分数)になってしまって困っている生徒が居たら、大体はそのケースです。
原因は逆算で引き算するべきところをかけ算してしまったり、割り算するべきところをかけ算してしまったりと様々です。
小学生の算数では答えがマイナスになったり、常識外れな数字になったりすることは基本的には無いので、そうなった時点で途中式をいったん見直す癖をつけるとよいでしょう。
ただし、「4-9+7=2」のように「-9」と「+7」を入れ替えて計算する場合もあるので一概には言えないのですが。
ちなみに、「(割り算が)割れ切れない!」という声も頻繁に聞こえてきます。
中学受験の算数では筆算をするといつまでも割り切れない(循環小数になる)ということは普通で、そういう場合は分数にするのですが、それがなかなか子供達には馴染みにくい考えのようです。
「割り算は『いくつかに分ける』ということなので分数と同じでしょ?」と言って納得してもらっていますが、実際に問題を解くときにはそのことを忘れてしまっています。
繰り返し経験するとそのうちに定着するので、練習を重ねることが大切です。
問題によっては工夫をすることにより計算量を大幅に減らすことができる問題があります。
それによって途中計算でのミスを減らし、スピードも速めることができます。
例えば、147×99という計算。普通に筆算をしてもよいのですが、147×(100-1)と考えて14700から147を引いた方が早く求められます。
また、18×7÷2などかけ算割り算が混じったような式は単純に左から計算するより2を分母にした分数にして計算した方がはるかに楽です(18と2を約分して、9×7を求めればよい)。
こういった工夫は三角形の面積やおうぎ形の面積、比例式の計算などに応用できます。
小数を分数に変えるときは、0.5=2分の1、0.25=4分の1、0.125=8分の1など、よく出てくるものは覚えておきましょう。
0.75や0.625などについても同様です。
計算の工夫においては数感覚というよりは練習量と習慣化がものを言うので、とにかく工夫できるところは実践することがポイントです。
計算が苦手な子ほど「工夫は逆にやりにくい」と言って地道な計算をしたがりますが、成長するためにはその姿勢を改めるたほうがよいでしょう。
例えば円周率のπ計算で最後にまとめて3.14をかけるのがそうですが、一歩踏み出して工夫を試してみないとその便利さはわからないものです。
計算の練習はできるだけ毎日しましょう。
日々の計算トレーニングは基礎力の鍛錬として必要で、野球で言えばバットの素振りに当たります。
数日行わないだけで感覚が鈍ってきて算数の学習に影響を及ぼします。
生徒たちの中に算数の宿題を一気に終わらせてその他の日は何も勉強しないという子は居ないでしょうか?
宿題を早く終わらせたら別途テキストの計算問題を解くなどして、何もしない日を作らないほうがいいです。
宿題を何日かに分けて解くのでも構いません。
4、5年生のうちは標準レベルの問題で練習しながら計算問題に慣れていき、一通りの問題を解けるようになることを目標にしてほしいと思います。
更に6年生になると標準レベルの問題は難なくこなせるようになった上で、志望校によっては難度の高い計算問題に取り組んでいくことになります。
高槻中や洛南中の入試問題では毎年複雑な計算問題が何問も出題されているのですが、そこで確実に得点せねばなりません。
また、文章題でも多くの計算量を要する問題が出題されます。
志望校別の対策授業では生徒の計算力アップのために計算問題をテスト形式で毎週競争させています。
やはりライバルが居ると少しでも良くできるように頑張るようです。
昨年などは全体的に計算力が不足していると感じたので、毎朝解く計算プリントを用意して約半年間配り続け、提出させてチェックを入念に行いました。
必死に取り組むからこそ能力は上がっていくのです。
計算力を上げるコツは
・同じ間違いを繰り返さないように意識する
・できるところは工夫して解く
・日々継続して計算問題を解く
この3点になります。
間違いやすいポイントや工夫を意識することは生徒自身では難しいところもありますので、私達からも積極的に指導しています。
日々の計算は、量の確保というよりは絶やさず継続することが大事なところです。
我々大人でもそうですが、単発的に行ったことは後にはほとんど何も残っていないものです。
継続は力なりという言葉通り、日々の習慣が能力へと繋がっていくのです。