他人の子育てはさて置き、我が子についてはどうか。
息子は私が中学受験の指導をしていたので、必然的に塾生となっていた。
その頃、息子の学年は10名余りで、皆仲良くしてくれた。
私は自分の出身校である洛星中学を受けてほしかったが、息子の成績はそこまで達していなかったのであきらめていた。
本人の希望した某有名中学を受験したが、落ちてしまった。息子はかなり自信があったので非常にショックを受けたようだ。
第2志望の中学に入ったが、生活態度、学業態度がだらしなく、身体も弱かった。
私はこのまま6年間を過すのは本人の将来のために良くないと思った。
私自身が過保護に育ったことを反省していたこともあって、息子は自然の中でまず身体を鍛えた方が良いと思い、そんなフリースクールをネットで探した。
広島に適当な施設を見つけたので、中2になる時に本人をだましてそこに連れていった。
もちろん本人はいやがったが、そこに置き去りにして帰ってきた。ある意味で虐待だったかもしれない。
そこの生活方針は「よく食べ、よく動き、よく寝る」であった。
時々、私もそこに泊まりに行き、生活を見させていただいた。
午前は農業、午後はスポーツ、夜は学習、そんなサイクルだった。
その地を開拓し、一時は酪農も行い、自給自足の生活を目指していた施設の代表者の野性的な生活力に私はいたく感心した。
お陰で息子もたくましく成長した。
中3になって京都に戻ってきた息子は私の塾の幹部講師である林部のもと高校受験に向け猛勉強を始めた。結果、洛星高校、西京高校エンタープライズ科に合格した。
精神科医の和田秀樹氏は「子供の自己肯定感を奪うことが教育虐待だ」と言われる。「自己肯定感は社会を生き抜くための心の基礎となり、大きなエネルギーになるものだ」という。
広島に連れて行って以降、息子と会話は今もない。
彼の心を傷つけてしまったことは大いに反省している。
しかし、彼に社会を生き抜くためのエネルギーを与える機会を設けた私の行為は今でも親として良かったと思っている。