全身の筋肉が衰える難病「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)の女性患者Aさんから依頼を受け、京都市内の自宅で薬物を投与して殺害したとして、京都府警は23日、甲と乙の医師2名を嘱託殺人の疑いで逮捕し、発表した。2人は女性の主治医でなく、SNSを通じて知り合ったとみられる。
朝日新聞 7月24日付
(注:当事者の表記を変えています)
「安楽死 その1」は1年前、この衝撃的な記事から始まった。Aさんは、「死ぬ権利」をネット上で訴え、安楽死を望んでいたといい、それに肯定的な投稿をしていた医師ら甲、乙に依頼したとみられている。そこで安楽死の是非が大きな問題となった。
これまでいろいろな角度から安楽死に対して考えてきたが、最後にALS患者の中で、安楽死に反対する立場の意見を2つとり上げたい。
……安楽死には明確に反対です。理由は以下の通りです。人間の尊厳を守りたいと言って安楽死をしていきます。……その人達の主張は人間の尊厳を守って死にたいということです。自分でご飯が食べられないことや排泄を介助してもらうことは自分の尊厳を失うことだと言っていました。しかし、人間の尊厳は本当にそういうことでしょうか?もしそうなら私は全く尊厳を失って生きていることになります。……その人によって尊厳は変わるということになるのです。私にとっては、身体が動かないことが尊厳を失ったことではありません。……安楽死を選ぶことはその人が自分はこういう状態なら生きていたくないということです。つまり自殺そのものです。これから社会の中で安楽死を議論するならあなたは自殺をどう思いますか?という事を明確にして欲しいです。……
「京都 ALS 患者嘱託殺人」における岡部宏生インタビュー全文
インタビュー実施日 2020年7月28日
……今の時代、ALS患者でも無限に活動的になれる。国内外を飛び回って活動する人、介護事業所を立ち上げた人、子育てや孫育てをする人もいる。でも、大半の医師はこうしたALS患者の心の動きや生き方を知らない。医学部では病気のメカニズムしか教えないからだ。そのことが、医師が自殺を助けることの合法化に私が反対する大きな理由の一つだ。……
竹田主子氏
朝日新聞 2020年8月1日付
岡部宏生氏は日本ALS協会の元会長で介護事業所も経営する。竹田主子氏(「安楽死 その5」ですでに紹介)は医師で「東京メディカルラボ」代表である。このお2人は身体が不自由で、介護を受けなければならない立場から、はっきりと安楽死に反対しておられる。そして、ALS患者でありながら社会的役割を実践しておられる。
私は当初、安楽死を肯定したいとの思いが強かったのだが、今その気持ちが揺らいでいる。当事者であるこのお2人の意見を前にしては何も反論できないのではなかろうか。
※ あの「車椅子の天才」ホーキング博士も21歳でALSを発症し、余命2年半を宣言されていたというではないか。