教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏による「教育虐待」の定義。
「あなたのため」という大義名分のもとに子どもの受容限度を超えて勉強させたり、過度なしつけを行ったりすること。その結果自己肯定感が著しく低い状態が大人まで続くなど、子どもの人生に負の影響を与える。
私の経験事例として不作為で「教育虐待」になりかけた例をまず御紹介しよう。
私の記憶ではお父様の存在の記憶がないのであるいは母子家庭だったかもしれない。お母様は立派な方で社会的地位のある仕事についておられ忙しくされていた。お母様は娘(Aさん)を中学受験させるため軽い気持ちで近所の大手進学塾に4年生から通わせた。Aさんは何の問題もなく通塾していたと思われたが6年生になってから塾に行きたがらなくなった。Aさんは4年、5年と塾のカリキュラムを何とかこなしていたが6年生になりついて行けなくなったようだった。
お母様は入江塾を知り、連絡くださった。夏の暑い日、本人も塾の建物の近くまで来たのだが入りたがらなかった。入江塾の女性講師が説得したがなかなか了承してくれなかった。そんなことが何回かあって、やっと教室に入ってくれた。私が特に面倒を見ていた小6の女の子と仲よくなってくれたのもあり、入江塾で勉強してくれるようになった。
その当時、年末31日、正月1、2、3日は私だけが塾を開けていた。Aさんはもう積極的にそんな日も来てくれた。私は小6の女の子2人を前に座らせてそれぞれの志望校の過去問を解かせ、解説した。Aさんは夏に初めて塾に来た生徒と同一人物と思われないくらい勉学に集中していた。彼女の顔には自信が漲っていた。そしてAさんはもともとの第一志望校に合格した。
「近くの学習塾、合格者を多く出している大手進学塾だ」というだけで塾選びをすると不作為の教育虐待になりうる場合もあるのではなかろうか。