秩序の崩壊
・・・・・いじめは多くの場合、学級を舞台に発生します。
その学級には、いじめが発生しやすいクラスといじめが発生しにくいクラスがあります。
学級の「荒れ」という言葉があるように、「荒れ」ていたり、秩序が崩壊しているクラスでは、いじめが発生しやすいと考えてまちがいないでしょう。
「荒れる中学校」や「学級崩壊」とは、いじめの代名詞のようなものです。
反対に、学級の規律が確立して、雰囲気のよいクラスでは、いじめは少なくなります。
学級集団の状態は、いじめ発生の重要な要因にまちがいありません。・・・・・
「なぜ、人は平気で『いじめ』をするのか」
加藤芳正著(日本図書センター)p.191から抜粋
「いじめの発生要因とされる学級集団の状態」に対する責任は、もちろん担任である教師にある。
さらに上司である教頭や校長にも及ぶであろう。
以前、ロシアの大統領がアラブの春に関連して「反体制側を支援したお陰で結果的にその後の秩序が混乱している」と欧米に対して批判的な意見を述べた。
独裁的な彼が言える立場ではないと思うが、「秩序の崩壊」は確かにしっかりしたトップが存在しないから起こる。
先日、あるニュース番組が愛知県の県立中学校のいじめについて報じていた。
A子さんはいじめにあって教室に入れず、登下校をずらして別室で1人で学習してきた。
中3のテストでは学年で16番という優秀な成績であったが、学級に参加していないことで内申点は低く「本人の志望校を受験することはできない」という結論が出た。
もちろんA子さんの落胆は大きく、お父さんも「いじめる側の生徒はクラスに参加していて内申点が高いということは納得いかない」と言われた。
学校側、教育委員会、文科省の説明はいつものように紋切型。
結局、愛知県知事が、自己申告によって受験の機会を与えるよう配慮していく旨を発表した。
しかし、この問題は制度的欠陥より「いじめの状態を改善し、無くしていくことが学校側にできなかった」その無能力さに起因するのではないか。
私は中学受験部門を担当しているので生徒や保護者から地域の公立中学校に行かずに他の中学校に行きたい理由を聞くことがよくある。
その中に消極的動機といわれるものが少なくない。
それは地元の公立中学校が荒れているから他校を受験したいというのだ。
たとえば学校でありながら授業が成り立っていない中学校が存在する。
またある中学校では校門で生徒が堂々とたばこを吸っている。
近所の者が火の始末などの不安を感じて校長に訴えに行ったところ、少しは減ったという。
ただし、全く無くなったわけではない。
さらに私どもの講師が塾のチラシを別の中学校で校門配布したところ、一部の生徒がそれをライターで燃やしてその場に捨てた。
それを見ていた教師は黙って片づけていたという。
能力のある教師はどこにいるのだろうか。
このような中学校でいじめられている子がいないことを祈らざるを得ない。