都市を離れて自然豊かな地域で学び、暮らす―。
そんな「山村留学」がここ数年、全国的に縮小している。
…地域の活性化を目指して各地で設けられた山村留学の制度は、曲がり角に来ている。(9月13日付 朝日新聞)
この記事を読んであるフリースクールのことを思い出した。
そこは山村留学というより、不登校やハンディキャップを持った生徒を受け入れる施設と言った方が良いかもしれない。
ただ、自然豊かという点と、そこから地元の公立中学に通っている生徒もいたので山村留学的な面もあった。
私は中学受験指導(特に算数)を専門としているが、我が子に関してはなかなか思うようにはいかなかった。
息子の場合、最後まで調整がうまくいかず、本人にとっては安全策をとったつもりのA中学校の入試に不合格になってしまった。
本人のショックは相当大きかったようだが、つい私は今までの学習態度について説教してしまった。
結局第2志望のB中学校に入学したが、私への反発もあったのであろう、遅刻・欠席が多くなり、家庭生活でも学業はそこそこテレビゲームに明け暮れる始末だった。
また、やや体質的に虚弱な面もあり、「学力よりまずは体力・気力をしっかりさせなければいけない。このままでは本人の将来に夢はないだろう」と思うようになった。
インターネットで調べた広島県の山奥にあるフリースクールを見学しに行った。
3月頃だったが、想像を絶する雪の量に驚いた。
20名ほどの生徒がいたが、私の息子よりもっと深刻な問題をかかえているようだった。
代表者は元小学校教諭のK先生で、家族で移住してきた頃は牛も飼って自給自足的な生活をしていたという。
私はそのたくましい生命力に感心した。
そこの教育方針は「よく食べ、動き、眠る」だった。
いったん家に戻った私は中1の息子と家内に「一泊だけ」と誘い、2人を連れて再びその山間の施設に向かった。
一晩泊まって無理やり息子だけを残して京都に引き返した。
帰りの車の中、家内は息子を騙した私の行為を責めた。
お世話になったB中学校の先生からも反対されていた。
ほとんど実態を知らないそのフリースクールを信じて我が子を預ける。
私にとって一か八かの賭けであった。
(つづく)