6月1日の日曜日、京都国際会館で行なわれた筑波大学名誉教授・村上和雄氏の講演を聞きに行ってきました。
氏は高血圧の原因である酵素「レニン」の遺伝子解読に成功した世界的な科学者だということです。
一般の聴衆が対象だったからでしょうが、氏が軽妙な語り口でもってわかり易く話して下さったので、私にとって大変有意義な一時を過ごすことができました。(それも無料で。)
氏は「遺伝子は環境や考え方で変化する」と言われます。
人間の細胞の中の全DNAは、30億もの膨大な遺伝情報を持ちながら、そのほとんどはオンになっていない。
悲観的な考え方、守りの姿勢では、いい遺伝子は眠ったままで、それは強く必要とされないと目ざめてくれない。
「できる」と思えば遺伝子はオンになり可能性が広がる。
――とまあ遺伝子ということばをとれば、いわゆる陽転思考、プラス思考、逆転の発想・・・・などの成功哲学となってしまうのですが、一流の科学者が実験による検証や自らの人生における経験をもとに話されたので、とても興味深いものでした。
その中でも、2003年に行なわれた「笑い」についての実験は、私も新聞記事で読んだような記憶があります。
糖尿病の患者さんに、食後、医学部の教授による講演と漫才の「B&B」のお笑い講演を聞いてもらい、それぞれの前後における血糖値の変化を調べたそうです。
その結果、面白くない講義よりも爆笑の連続だった講演を聞いた場合の方が、食後血糖値は大幅に抑えられたということです。
氏は「笑いは笑いごとではない」とユーモアたっぷりに話されました。
しかし最も考えさせられたのは「サムシング・グレート」という表現でした。
最近、人間の遺伝情報の読みとりは完了しました。
そこで氏は、「読む者が偉いのか、書く方が偉いのか」との問いかけとともに、精緻で美しい遺伝子のつくり主である「人知を超えた、何か偉大なもの」の存在を強調されたのです。
後日、私はあるカトリックのシスターから信仰や聖書についての話をうかがう機会がありました。
そこで偶然、キリスト教信仰の根強いアメリカで、今、「ガッド(神)」のかわりに「サムシング・グレート」という表現がよく使われるようになっていることを知りました。
科学を究めていき、また、自然のすぐれた調和を知れば知るほど、ついにはこの問題と対峙せざるを得ないということでしょうか。
それは、本来の教育の原点であるべきかもしれません。