〈中学受験 国語の成績を上げる⁉ 読書のススメ その弐〉
前回の「読書のススメその壱」では、読書をすることで活字に慣れ、読むスピードが上がり、素早い内容理解に繋がるとお話ししました。
今回は「せっかく読むなら中学受験に役立つ本を」ということで、「入江塾講師のお勧めの本」を紹介します。
今回紹介する本の中には、中学受験に頻出のものもあります。
読んだことがある作品が出題されると、内容がわかっているために早とちりしてしまう恐れがあります。
問題を解くときには、スピードだけにとらわれず、きちんと丁寧に読む習慣をつけることも大切です。
なお、本についてのコメントは、スタッフが書いた原文に近いかたちで載せています。
中学入試ではほとんどの学校で出題されています。
主人公である少年少女が、学校生活や部活動、家庭の中での出来事をきっかけに成長する姿を描いたものが多いようです。
また、洛星中学校のように、明治から昭和にかけての作品を出題する学校もあります。
小学生には読みづらいので、受験を考えているなら慣れておく必要がありそうです。
・『兎の眼』 著:灰谷健次郎
新任女性教師の「小谷先生」と、ゴミ焼却施設から小学校へ通う児童たちが心をかよわせてゆく過程がとてもていねいに描かれています。
その児童たちのなかでも、とくに小学一年生の「鉄三」がこの物語のもうひとりの主人公です(鉄三は今の言葉で「自閉症児」として診断される児童かもしれません)。
『兎の眼』を最後まで読み進めていくと、「心の交流」というごくありふれた出来事が、本当は、偏見を少しずつ乗りこえながら、同じ社会にともに生きる存在としてお互いの信頼を重ねるなかで育まれてゆくものなのだと気づきます。
数年前、『兎の眼』を読み終えた6年生の生徒に感想をたずねたとき、「鉄三がすごくかわいい」と言っていたのを今もおぼえています。
・『二分間の冒険』 著:岡田淳
一昨年、受験前の6年生が勧めてくれた小説です。
ファンタジーの名手である岡田淳の作品は、たまに教科書(特に低学年)に登場しますが、この作品はかなり長くて読み応えがあります。
頭を使って読み進めていく必要があるので、直接受験のためというわけではありませんが、ワクワクしながら読んで教養にもなるかと思います。
・『雪屋のロッスさん』 著:いしいしんじ
童話風の短編集です。
塾で使っている問題集に、そのなかの「雨乞いのかぎ」という話が載っていました。
一話一話は短いのですが、含みのある話ばかりなので読解力が鍛えられます。
むしろ読み取り能力がない子が読んでもあまり面白くないかもしれません。
・『魔女モティ』 著:柏葉幸子
問題集に出てくる、塾生にはお馴染みの、あの紀恵と涼と朋恵お姉ちゃんの話です。
ハードカバーは、『魔女の宅急便』の書籍版の絵を描いている佐竹美保の絵です。
面白いのですが、高学年にはちょっと物足りないかもしれません。
中学年くらいにお勧めの一冊です。
(科学や生物・植物に関するもの)
難しい専門用語が出てくることもありますが、好奇心が刺激され、理科が好きでなくても楽しんで読むことができます。
・『一晩置いたカレーはなぜおいしいのか -食材と料理のサイエンスー 』 著:稲垣栄洋
6年生の「ベースアップ・国語」は、五ツ木・駸々堂の過去問演習をメインに授業を進めています。
今ここに2022年第6回(『生き物が老いるということ』)、2020年第3回(『弱者の戦略』)、平成28年第5回(『たたかう植物』)があります。
問題文の著者はいずれも静岡大学大学院教授の稲垣栄洋さんです。
著者の作品は、ここ数年の中学入試での出題回数において、常に上位にランクインされています。
植物が自然界で生きぬくために取っている「戦略」、生き残るためには取らざるを得ない「戦略」とは何か…。
他の植物との関係や昆虫、動物、われわれ人間も含む自然環境全般から論じています。
もちろん、授業は問題を解くことに主眼があるのですが、いつも多様な気づきを与えてくれていて、文章の続きが気になってしまう著者の一人です。
今回、ご紹介するのは『一晩置いたカレーはなぜおいしいのかー食材と料理のサイエンスー』(新潮文庫)です。
先ほどの五ツ木・駸々堂の過去問の出典よりもややライトな印象を受ける作品となっています。
本書では、日本人に身近なカレーやお好み焼き、寿司を通して料理と科学の関係が見えてきて、さらには私たちにとっての食の本質が、生き物の持つ生きる力をいただいているということがよくわかる内容になっています。
論説文というよりは随筆文に近い感じであるため、小学生でも苦にせず読むことができると思います。
植物のどの部分を私たちがいただいているのか、越冬中のタンポポがロゼットになっている理由などは理科でも問われてくるところです。
ダイコンに関する記述は、中学1年生用国語の教科書(光村図書出版)に「ダイコンは大きな根?」として採用されています。
(言語や学び、生き方に関するもの)
扱っているテーマが難しかったり、難しい語句が出てきたりと、簡単には読めないものもありますが、人生を豊かにしてくれるものも多くあります。
実際に、思春期に入り悩んでいた塾生が「この本に出会い助けられた」という話を聞きました。
読書は国語力をつけるためだけでなく、考え方や生き方を学ぶためにも良いものです。
・『こころの処方箋』 著:河合隼雄
入江塾の塾生にもファンがいて、「心が苦しくなった時、助けられる」と勧めてくれました。
一章一章が短く、現代社会を生きるための秘策を生み出す55章です。
国語の教材として見かける機会も多く、読解の難易度も受験生にぴったりです。
国語力をつけるだけでなく、トラブルに立ち向かう助けになってくれる良本です。
・『思考の整理学』 著:外山滋比古
中学入試頻出です。
先日、今年中3になる卒塾生が教室に来て、「けっこう面白い」と言いながら読んでいました。
また、大学ではレポートや論文の書き方を練習する授業でも使われているようです。
子供たちが自主的に読める内容でもあり、外せない一冊だと思います。
ここでは、入江塾講師が中学入試を踏まえて選んだお勧めの本を紹介しましたが、本は私たちを日常生活では体験できない新しい世界に連れて行ってくれます。
わくわくドキドキしながら、言葉を学び、想像力や表現力を豊かにし、生きる力を育みます。
子どもたちが自主的に読書に親しむことが出来るように、入江塾では読書環境を整えるよう努めております。